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2005年 03月 20日
(On the Go Internet) 3月6日に成田を出発してから、大体一人で過ごす生活が続いています。 大体というのは、昼間はツアーのメンバーと行動を共にしていたという意味で、ホノルルに入ってからはほとんど一人です。 日頃、いろんなことをまとめて、しかも持続的に考える時間はほとんどありませんから、いいチャンスです。 今回は今年から新規導入したシステム手帳を持ってきたので、それが大活躍しています。解決しなければならない問題や、ぶちあたっている壁、「将来こうありたい」というプランなどについて、気が向くまま考えをめぐらせ、アイデアを書き留めています。 これって、なかなかのファンです。 今回の旅行で蓄積した知識とアイデアで、秋くらいまでは仕事を推進できそうです。 そういえば去年の今頃は一人でニューオリンズに出かけ、カビの勉強をしていました。去年の秋はマウイで学会。 で、今はオアフ。 うまい具合にリフレッシュと栄養補給をしていることが分かりますね。自分でも。 今回の旅の成果は、NPO法人「救急医療の質向上協議会」の組織と事業に関する基本方針案が固まってきたことです。マウイの学会では、NPOのネーミングなんかを考えていたことを思えば、ずいぶん進歩したといえなくもありません。 (NPOについてはhttp://npocats.exblog.jp/をチェックしてください) 来年度からスタートする「救急医療の質向上協議会」の基本戦略は、 「(STRATUS+WISER+AHA)/3+和風」です。 何のことかさっぱり分からないでしょうが、NPOが登記されたらHPでこのあたりをお知らせしたいと考えています。 #
by well-be
| 2005-03-20 14:28
2005年 03月 17日
ピッツバーグからデンバー経由でホノルルに到着。
今日で4日目です。 滞在しているホテルの部屋からインターネット接続ができないので不便です。 でもホテルの近くに”On the Internet”というネット接続サービス(ネットカフェ)を見つけ、そこでネットに接続しています。 最低料金が20分/2ドル、でも3時間/12ドルなど割引あり。 Lewers St.(牛角のあるビルの4階)にありますから、ぜひご利用ください。 免税店の前辺りで、ちらしを配っていますからすぐに分かります。もちろん牛角もクーポンを配ってます。 さて、明日からAHAのHeartsaver CPR, BLS for Healthcare Providers, BLS Instructorコースを受ける予定です。 こちらにきてやっと時間が取れ、テキストとマニュアルを読んでいるのですが、AHAの組織とコースはよくできていますね。 感心します。日本人には苦手な分野かもしれません。 ミッションドリブンなところがまず違います。またドキュメンテーションがしっかりしています。その前に、組織がよくできています。 AHAのナショナルとレジオナル委員会の関係なんか、絶妙です。日本の行政や学会では、AHAのような事業を展開することは困難でしょうね。もっと日本の伝統に学ぶべきかもしれません。華道や茶道の家元制度とか。 一番違うところは、われわれ日本人がロジスティクスを苦手にしているところでしょうか。 どうも細かいところまで論理的に考えられずに、だいたい大雑把になってしまいます。 「ま、ここまで考えればあとは何とかなるんじゃない?」 これと同じような指摘は、岩波の「日本人の形」にもあります。 日本人の根源的な性格というように位置づけられています。興味があれば読んでみてください。 話はジャンプしますが、メディカルコントロールにかかわる医師であれば、医師と消防本部の考えがこんなに違うのか、とため息が出ていると思いますが、実はそれほど違わないのかもしれません。日本人と合理的な西洋人と比べると。その話も「日本人の形」にあります。 徒然に書いていますが、STRATUS、WISER、AHAとハシゴして、今後あるべき救急医療体制のアイデアを深めることができました。 #
by well-be
| 2005-03-17 08:14
2005年 03月 11日
Peter M. Winter Institute for Simulation, Education and Research University of Pittsburgh Medical Center 今日は午前7:30からここWISER(http://www.wiser.pitt.edu)でコースを受けました。 コース名は、Design, Development and Operation of Medical Simulation Centersといいます。受講するまでは、「すごくスペシフィックなコースだなあ」と思っていましたが、コースを修了してみると実に具体的・実践的・ノウハウ的で、とても価値あるコースでした。 STRATUSでシミュレーション教育の総論を学び、つれづれにセンター設立の構想などしていたのですが、そういう状態の僕にはピッタリのコース内容でした。この原稿を書いた後、病院長へのプレゼンを作成する予定です。 WISERのディレクターは、Schaefer Ⅲ JJ, MDで、いかにも「スマート」という印象(一方、STRATUSのディレクターは「パッショネート」)。彼はエンジニアリングのディグリーを持っているとのことでしたが、それでWISERの成功の理由の一つが理解できました。 彼と彼のスタッフ、コリーグが話してくれた内容は、日本人にはビジネスライクに感じられるかもしれませんが、僕はTQM(total quality management;総合質管理)に則ったものだと受け取りました。 WISERはトヨタの工場ように(ディレクターは社長兼工場長です)運営されていると想像しますが、これはこれからの医療施設のあるべき経営の姿といえるでしょう。 ということで、すごくお手本になりました。今日のコースは。 WISERは10年前、SOHO(small business)から始まりました(ディレクター談)。その当時は高価だった(今も・・・)1体のシュミレーターで、シュミレーション教育を手作りしていったようです。 実に実践的です。Learn by experience… ここで重要なのは「シュミレーターを購入すること」と「シュミレーション教育を行うこと」は別物だということです。 「ピアノを叩いてノイズを出す人もいれば、ピアノを弾いてミュージックを創出する人もいる」(彼はアナロジーが上手でした)。 Do you understand what I mean? シュミレーション教育は実はマス教育です(今日知りました・・・)。 今まではOJTと称してベッドサイドの経験から学習していたのですが、時代は変わりました。今は(これからは)シュミレーション教育と称して、シュミレーションセンターで学習し、それからベッドサイドで実際の患者さんから学ぶ。これが現在の医師養成のあり方です。 マスプロダクションで重要なのは質管理です。トヨタの「レクサス」は、質管理の勝利の証拠です(WISERは「レクサスブランド」ですね、米国では。ドイツのメルセデスを越えています)。 マスプロダクションで高い質と評判を得るには、ドキュメンテーションと人材育成が不可欠であるのは、シュミレーション教育でも同じです。 また、豊田をトヨタにしたのは、原理原則+現場の実践(QCサークル)という仕組みです。 原理原則だけでは「できるはず」も実際には「できない」のです。 このことが理解できたのはこのコースのおかげです。感謝、感謝 こう書きながら思いついたのは、今日のコースは日本科学技術連盟が行っているセミナーと本質的には同じだということです。 「ノウハウ」を公開するという意味で。僕は日科技連(クリニカルパスの飯塚先生はエンジニアリングの教授・Dr Schaeferもエンジニアリング、共通点を感じますね)や日本能率協会のセミナーを結構受講したのでよく分かります。 失敗から築き上げられて成功ストーリーに埋め込まれている「ノウハウ」。 これはそう簡単に公開してもらえるものではありません(彼らもそう言ってました)。 TQM的に言えば、今日の話は課題達成型QCストーリーと呼べるでしょう。 TQM手法の医療バージョンですから、その基本は日本で十分に学べます。 でも成功するのは難しですね。シュミレーターとシュミレーションの関係のように。 最後に「麻薬中毒」の喩えはとても愉快で、いいtipになりました。ま、話題が話題だけに、詳述はしませんが。 いずれにしても、Let’s get it started! #
by well-be
| 2005-03-11 06:46
2005年 03月 10日
(「専門家の知恵」The reflective practitioner. p.121から)
現在、「救急医の確保」という局所的な問題解決を図るために、「救急医療のあり方」をリフォームしよう(報告書を作成するということですが)という大局的なプロジェクトが始まっています。ちなみに今年の日本救急医学会(大宮)でサブテーマに分け、フリーディスカッションが行われることになっています(これは本題ではありません)。 ここからが本題ですが、出典は「専門家の知恵」という本です。もともとこの本は同僚から薦められたものですが、実践的思考のスタイルを必須とする専門家をどのように育成するかというテーマが扱われています。例えばハーバード・ロースクールでは有名な「ケース・メソッド」が採用されていますが、その目的は「think like lawyers」として、知識・技能・態度をそれぞれ教育するのではなく、全体(シュミレーションを通して)をダイレクトに教育することにあります。 救急医を育成するための方法論は、「think like acute care surgeon/emergency physician/generalist」であるべきだ、ということになります。 そこで(長い)引用ですが、 「実践家の多くは、技術的熟達者として自分自身を捉える見解に自らを閉じ込めているので、実践世界の中で、省察をもたらすものを見いだすことができない。彼らは、選択的な不注意、ジャンクカテゴリー(あてはまらない現象を例外として排除するカテゴリー)、状況の統制といった技能にはあまりにも長けている((未熟な専門医))。これらは、「実践の中の知」の安定性を保つために使う技術である。彼らにとって不確実性は脅威である。不確実性を認めることは、自分の弱点の一つの徴候となる。他方、「行為の中の省察」に傾倒し、その省察に熟達した者((救急医))は、自分たちの方法について知っていることを言葉にできず、自分たちの思考を特性や厳密性を正当化して述べることができないために、ひどくもどかしさを感じている。」 (( ))池上・(訳はよくありません、ちなみに) 長年救急に専従している救急医は、「ひどくもどかしさを感じている」のではないか?というのが僕の考えです。自分たちの特性を表現できないでいるため、後継者が減少している部分があるとも思います。暗黙のうちに救急医(あるいは総合診療医)に共感できる若手医師しか救急医を目指さないので、結果的に救急医の数が減少しているのが現状だと思います。 で、シュミレーション教育です。 マネキンを用いて標準的な手順を教育するスキルステーション、あるいは心肺蘇生法習得コースといった基本的なシュミレーション教育ではなく、もっとハイレベルのシュミレーション教育のことです。 救急の現場で稀に一瞬やってくる「teachable moment」をシュミレーションで再現するという、ハイレベル・シュミレーションです。 これができれば、熟達した救急医は、自分の思考プロセスをシュミレーションの教材の中に埋め込むことで表現できるようになるはずです。そうすれば、上述したジレンマは解消され、救急医志望者も増加するかもしれません。救急医療が学習しやすくなりますから(救急医療ほど図書で学習しにくい医療はないのではないでしょうか)。 そしてハイレベル・シュミレーションを行うには、教材を作者が好きなようにプログラムできるフレキシビリティが不可欠です。 ボストンのSTRATUSはそれを実現していますが、それにはいつくかのキーポイントがあります。 一つはプログラマーの存在です。それと専従のマンパワー、さらに施設をフレキシブルに使用できるアカデミックな環境。 ちょっと悲観的ですが、どれをとっても日本では実現が極めて困難です。スキルステーション以上の(ハイレベル・シュミレーションができるような)シュミレーションセンターを、日本の医療施設が単独で設立・運用するのは相当難しいでしょう(スキルラボはできますけど)。 楽観的なアイデアはありますけど・・・ #
by well-be
| 2005-03-10 11:24
2005年 03月 10日
3月9日 今日はボストンからピッツバーグへ移動日で、午前中はボストン観光です。昨日はストームで、今日は氷点下のボストン市内。 観光名所のクインシィーマーケットもさすがに混雑なし。クラムチャウダーで暖まっています。 こうやって海外に来ていると、いろんなことを集中的に、とはいってもモザイク的ですが、ずっと考えることができます。本も持ってきているのですが、読む暇はそれほどありません。こちらで見聞きしたことに考えをめぐらせるだけで時間が過ぎますから。 この二日間はどうやってシュミレーションセンターを作るか、運営も含めて戦略を考えています。 ちなみに僕が持っているシュミレーション教育(シュミレーションを使った教育訓練)のイメージですが、ディズニーランドのジャングルクルーズです。シュミレーションではマネキンと、決まったシナリオを用いますから、出し物は決まっているわけです。そういう意味で、ジャングルクルーズ。クルーズも出てくるものは決まっていますが、それでも乗るたびに楽しめます。何故楽しいかというと、それはグループで乗船していることと、船頭(船長?)役のキャストの演出が巧みなためでしょう。キャストは「役者」なんです。ゲストは観客、文字通り。 そのせいで「ヒヤリ」とすべきところでは「ヒヤリ」とするし、「笑う」ところでは「笑って」しまいます。 シュミレーション教育って、これと似ています。 つまり、学習すべきポイントをストーリーの中に埋め込んで、シュミレーションのファシリテーターが「学習」を演出する。学習者は、「学習」を体験する(反復学習も可能)。いわゆる知識・技能・態度という3つの学習ドメインが1つのセッションで総合的に身に付けることができます(キャストの演出力と、学習者の準備状態によりますが)。というより、これが実践的学習でしょう。 シュミレーション教育は、マネキンを使った定型的な手続きの習得とはまったく別物でした。 パイロットのシュミレーション訓練と同じく、医師のシュミレーション教育でも状況を再現してその中で学習を創出しなくてはなりません。教えたいことが稀にしか起こらないような場合、例えば病棟で心肺停止が発生するとか、状況を再現し教育を成立するにはシュミレーションが最適です。 問題は「キャスト」の育成です。指導医が「役者」として、学習者の学習をファシリテートできなければ、シュミレーションい教育は成り立ちません。ここはちょっと考えなければならないところです。一生懸命に教えたいと思えば、自然と役者になれるのは、と楽観的にも考えていますが。 #
by well-be
| 2005-03-10 10:32
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